一昨年の11月から、本格的に中小企業の改善のお手伝いをさせていただくようになって、自分なりに今流行りのDXの必要性が少しわかったような感じがしてきている。
流行のDXと一言で言っても、自分が考えるには大きく2つに分かれるのではないでしょうか。
1つは、データの可視化を行い改善点を見つける、現状発展型とでも言うタイプ。
もう一つは、同じようなことなのだが改善点を見つけて現状を好転させるのではなく、新規の事業を創造していくいわゆる価値創造型。
日本の場合、現状ではほとんど前者でアメリカなどは後者だと思います。
どちらが良い悪い言う必要もなく、そもそもそう言うことに取り組んでいないことが、あえて言うなら悪であり時代遅れだと言う事になるかな。
そんな中、中小企業の改善をお手伝いしていて一つ分かったことがある。自分はいちよう大企業で働いているが、その視点から見て中小企業だからではないが、より一層顕著に分かったと言うことがあるのだ。
勘所の世界
中小企業で顕著な箇所は、人依存の仕事方式が定着化と言うより不変だって言うことだ。
何を言いたいかというと、いわゆるKKDの世界が染み付いており、それを変だとは思わない、常に当たり前だ思っている事なんだよね。
更には、変化を好まない所でしょうか。

KKDって知ってますか? 最近の人はデータに基づいてと言う言葉をよく使うので、もしかしたら知らないかもしれないね。
KKDって言うのは、「感、経験、度胸」のことでKan、Keiken、DokyoだからKKDなんだよ。昔からの仕事方式で、特にモノづくりの世界では職人と言われる人が仕事ができる人と言われてきており、その人たちはほとんどこのKKDの世界の人間なんだ。
最も、KKDが有るから神社仏閣のような高度で芸術できな建築物ができたりするのかもしれない。よく考えてみてほしい、はるか昔の鎌倉時代や江戸時代に今と同じような幾何学で表すような建築法が有っただろうか?
どちらかと言うと、イメージ図のようなものを職人がその人のKKDで具現化していく感じだったと思う。
これはこれで素晴らしいことだと思うが、職人になるまでの何十年を今の時代簡単に過ごすほど時間の流れは遅くないんです。
だから、ここで生きてくるのがDXだと思うのです。
何故DXなのか?
例えば、ある技術を習得するのに素養が有る人で10年、一般の人だと20年掛かるとしましょう。
その技術を持っている人が10人必要だが、現在認証できるレベルの人は3人しか居なかったとします。
素養が有る人が7人揃ったとしても、10人になるのは10年後だ。もしかしたら、10年経つ間に今いる3人も働けなくなるもしれない。
そうしたら、永久に10人揃うことは無いので、この仕事はできないと言うことになってしまう。
何故このようになってしまうのか?
それは、その技術に対して完成度が定量的な数値で現されていないので、修行するにも指導するにも何を基準にすれば良いか分からないと言うこと、つまり合格とされる判断基準がなんだよね。
どこまで到達したら、その技術が身についたと判断することができない。(ほとんどの職人の場合、一生が修行と思っている節が強いため)
判断基準を明確にするには、つまり、その技術を数値化すると言うことで定量的に判断することができるようにする、それはつまり技術の可視化をしなければいけない事なんです。
技術を可視化する?
そう、そこででてくるのがDXがなんです。
DXの初期段階はデータの可視化です。もし、技術が定量的に可視化できれば、その技術の難易度も定量的数値で表せます。
その難易度を表す数値を攻略する方法を考えれば、その技術の習得方法を簡素化できるということになるのではないしょうでか。
それでは簡単な事例で説明してみます。
ハンダ付けって知っていますか? 配線や部品を基板と接続する際に、ハンダを溶かして溶着させる技術です。
このハンダ付けにも、実は高度な技術が必要なんです。
それは、ハンダは必要以上の熱を加えると酸化が進み、ハンダが劣化して結合力が落ち脆くなる。また、見た目も鈍く光るようになり外観上も良くない。
ハンダ付けをやったことがない人や、素人が行なうとまずこのような状態になり、すぐにハンダ剥離を起こしてしまい、品質が悪いものしかできないんです。
ではこのハンダ付けをDX化していくとどのようになるのでしょうか。
良いハンダ付けは、ハンダの濡れが良いと言われるように、ハンダの溶解部が綺麗に流れており、表面も艶があるようにキラキラと輝いています。このようなハンダ付けは見た目だけでなく強度も強く、経年変化に対しても非常に良い良い条件となっております。

このようなハンダ付けができるようになるまでには、たくさんのハンダ付けを行い、たくさんの失敗を経験して、自らの経験を積み勘所でハンダ付けの方法を身につけていくしか有りませんでした。
(適切な半田量と適切な鏝を当てる時間が良品を出すポイント)
しかし、この各種条件がデジタル化されていれば、その数値になるようにハンダ付けを行えば、ズブの素人が行っても同じものができると言うことになるんです。
実現方法としては、ハンダの濡れが良いと言われる状態の表面の光沢分部をデータ化します。そして、ハンダ付け温度と、ハンダの接する時間を数値化して、先ほどの光沢と同じ状態になる数値を見つけ出すのです。
それができたら、ハンダ付けをする設備に温度センサーやハンダを熱する時間設定をするタイマー、そしてその状態が実際に維持できているかの動作センサーを付けます。
そうすれば誰が作業をしても職人と全く同じとは言わなくても、90%以上の確率で同じものができるようになるはずです。
このように、条件とその条件を維持する事を具体化すれば、素人でも時職人レベルに近い作業ができるようになるのです。
このように、職人の技が定量的数値で表せるようになれば、その数値を確保する制御技術を作り上げることにより、作業者に職人は必要なくなり、職人は監督に回り更なる安定化に向け改善が進められます。
これがDX化する理由なのです。
次に必要となるもの
DXが必要だと言うことが分かってもらえたでしょうか。
東京都大田区大森には職人がたくさん居る中小企業がひしめいています。過去には、マレーシアのマハティール前首相が訪れ、町ごと買い取ろうとしたほど優れた技術の宝庫です。
しかし、多くの職人は高齢化してきており、現状では多くの技術が消滅しかねない状況であり、絶滅危惧種化しております。
これは先に上げた技能継承を行うには、あまりにも多くの時間が必要だからです。
しかし、先に説明したようにDX化すればこれらの技術は継承していくことが可能となるのです。
実際に中小企業を支援してみて感じたのは、悲しいかな中小企業では人に教える事は自分の仕事がなくなるという意識と、仮にそう思っていなくてもどうすれば定量的数値化ができるかが分からないのです。(職人気質が多いので)
また、定量的数値化する前に、何を定量的数値とすればこの技術が継承できるのかもわからないのが実態なのです。
つまり、この技術のポイントはどこだと言うところ、いわゆる勘所が職人でないから普通の人では見分けられないんだと言うのを感じましたね。
これから中小企業がやっていかなければいけないことは、生き残って行くために会社の持つ技術、職人の持つ技術を定量的数値かする分析力が必要なのかなと思いました。
今の世の中では、ビッグデータを解析して課題点や着眼点を見つけるためのデータサイエンティストと言われる人に注目が集まっています。
職人の技術を定量的数値かするのも、全く同じような人達だと思っています。
ただ大きく違うことは、職人に対して何故その動作が必要なのかをヒアリングして、その内容を地道に数字化していくと言うことですね。
ビッグデータ解析と違うのは、ビッグデータとして何を集めていけば分からない状態からスタートすると言う事です。

つまり、その数値の持つ意味も文字データとして残し、数値データと連動することで初めて技術が数値化されたと言うことになります。
先のハンダ付けで言うならば、何故ハンダ表面の艶が必要なのか、その意味と艶の数値に意味があるということなんです。
やるべきことが明確になった後、このようなデータサイエンティストが必要になるんですね。
これは今までの大企業の中に居たのでは、多分気が付かなかったことだろうと思いました。
大企業なりのDXと中小企業が行うDXはやはり違うもので、これを同じ土俵で語っても話が最後まで噛み合わないかなと、自分では感じた次第です。
自分が進む道
自分の最大の武器は何か? ずっと考えていた中で、一番は海外も含めてずっとモノづくりに関わってきたこと。
そしてその中で、ものを作って行く時に何が重要なのかをケースバイケースで学ぶことができたと言うことだと思う。
1990年代に海外の生産ラインを立ち上げながら、明日の仕事をスムーズに行えるように段取りをして帰ることを淡々と教え込んだりしたことなど、図面や手順書の2次元の世界ではわからないことを、教え続けてきました。
同じように、現在の日本の中小企業も自力で生き残れる会社と生き残れない会社が存在しています。
この生き残れない会社に、今何が必要なのか、何をするべきかを第三者として客観的に観察し伝えて指導していくことが自分の使命だと思っています。
その為の挑戦が昨年から本格的に始まったと言う感じですね。本業、副業と二足の草鞋を履き、しかも副業は異業種対応という自分にとっても視野が広がる内容なので、楽しく頑張っていきたいと思っています。
ナゼ上手くいかないのだろう?どうすれば意識付けができるのだろうか?悩んでいる中小企業は多いかと思います。
そう言う方々のお手伝いが出来れば良いなと常々思っております。
着眼点や改善点を一緒に見つけていきませんか。いつでもお手伝いいたします。
